step④ フィギュアスケートの得点の構成
注意!!この記事は2019ー20シーズン版です。
これまでの内容を簡単にまとめます。
- step①では、フィギュアスケート競技はSP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)によって構成されていることを説明しました。
- step②ではSPが7個の要素(エレメンツ)で構成されていることを説明しました。
- step③ではFSが12個の要素(エレメンツ)で構成されていることを説明しました。
今回は、フィギュアスケートがどのように構成されているのかを、さらに深く説明します。
<今回の内容>
- 技術点・演技構成点・減点についての説明
フィギュアスケートの得点の構成
SPとFSの得点は技術点(テクニカルエレメンツスコア)・演技構成点(プログラムコンポーネンツスコア)・減点(ディダクション)の3つの点の合計により構成されます。この3つの点について簡単に説明します。
技術点
フィギュアスケートはSPでは7つ、FSでは12個の要素を、演技結果に応じて点数にして評価します。その各要素の点数の合計を技術点と呼びます。
また、演技結果に応じてそれぞれの要素に与えられる点数は、基礎点+GOE(出来栄え点)から算出されます。GOEとは技の質を評価する得点です。技の質が高ければ加点されるし悪ければ減点されます。詳しいことは次回以降説明しようと思います。
- 技術点・・・選手が実行した各要素に対して与えられる点の合計。
- 基礎点・・・各要素を構成するジャンプ・スピン・ステップに与えられている点数。難易度に応じて点数は様々。
- GOE(出来栄え点)・・・要素の出来栄えによって加点されたり、減点されたりする点数。ベースは0点。
演技構成点
スケート技術、要素のつなぎ、動作/身のこなし、振り付け、構成・曲の解釈をそれぞれ10点満点で評価したものの合計点
- 演技構成点・・・プログラム全体を通して判断される5つの項目の合計点
減点
- 減点・・・競技で実施が禁止されている違反行為を行った場合、この項目で点数が引かれます。
まとめ
フィギュアスケートの得点構成を図で表すとこのようになります。
これからは技術点や演技構成点などの細かい点数に関するルールについて説明していきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ルール編一覧はこちらです。
フィギュアスケートのセンター試験を作ってみた。
もしもセンター試験という科目があったならというコンセプトで
こんな感じです~
第1問はフィギュアスケートのルール
第2問はフィギュアスケートの音楽
第3問は2018‐19シーズン
第4問はロシアに関する問題
第5問は日本に関する問題
第6問はプロトコルから読み取る問題
です!!
問題の続きと解答はPDFファイルに保存してあるのでもしよろしければ解いてみてください!!
[追記]出題ミスが発覚しました!!
第1問の問1、第5問の問1、第5問の問3です。すみませんでした。
現在は訂正されています。
センター試験フィギュアスケート 問題.pdf - Google ドライブ
センター試験 フィギュア解答.pdf - Google ドライブ
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
step⑫ 減点(ディダクション)について
フィギュアスケートの点数は大きく見ると、技術点・演技構成点・減点で構成されています。今回はそのうちの減点について話していこうと思います。
今回の内容
- 減点の定義
- 違反行為の内容
減点とは
定義としては違反行為による減点のことです。
技術審判によって判断されます。
違反行為にはどんなものがあるのか
転倒・落下
厳密に言えばエッジ以外の部分で体重の大部分を支えることを指します。
減点:1~2回目は-1.0点。3~4回目は-2.0点、5回目以降は-3.0点(転倒するたびに減点)
演技時間の過不足
演技時間の過不足
減点:5秒につき-1.00点
名前をコールされたら30秒以内へ
減点:30秒未満の遅れは-1.00点。それ以上は棄権扱い。
スケート衣装のルール違反
- 過度な露出は禁止(具体的な肌の割合に関するルールは無し)
- 過度に肌を出したように見えるものは禁止
- 男子はタイツ禁止。ズボンを着用すること
- アクセサリーや小道具は禁止
- 脇毛がみえるのも禁止
- 衣装の落下は禁止
減点:以上を満たしていない場合-1.00点
バク宙などの危険要素
バク宙などの縦回転は危険なので禁止です。
減点:1回につき-2.00点
10秒以上の中断
10秒以上の中断(やむを得ない場合を除く)
減点:10秒につきー1.00
最後に
今回は短めで以上となります。今回でフィギュアスケート競技の仕組みの説明をほとんど終わりました。
フィギュアスケートの演技を構成するものにはジャンプ、スピン、ステップそしてそれらをつなぐ”つなぎ”というものがあります。ジャンプの説明は終わっているので次回はスピンの説明からしていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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step⑪ 演技構成点について詳しく解説する【フィギュアスケートルール2019】
フィギュアスケートの点数は大きくみると、技術点・演技構成点・減点で構成されています。今回はそのうちの演技構成点について話していこうと思います。
今回の内容
演技構成点とは
演技構成点とはフィギュアスケートのプログラム全体を5項目で評価した得点です。
演技構成点の重要性
フィギュアスケートは滑ることを通して様々なことを表現するスポーツです。もしも演技構成点が存在しなかった場合はただのジャンプ大会になってしまいフィギュアスケート本来の意義を失ってしまいます。また選手にも相当な負担がかかってしまうこととなるでしょう。
演技構成点の5つの項目
スケーティング技術(SS)
スケーティング全体の正確さや確実さにより定義されます。
エッジ、ステップ、ターンを自在に駆使することや、無駄な力なく加速しスピードを変化させることが出来ているかを評価します。
<考慮される点>
- 深いエッジ、ステップ及びターンの利用
- バランス、リズミカルな肘の動き、足運びの正確さ
- 流れと滑り
- パワー、スピード、加減速の多様な利用
- あらゆる方向へのスケーティングの利用
- 片足でのスケーティングの利用
要素のつなぎ(TR)
要素と要素の間のつなぎが多様であるか。またこれらがはっきりとした目的をもって用いられているかどうかを評価しています。
<考慮される点>
- ある要素から別の要素への動作の連続性
- 多様さ
- 難しさ
- 質
演技(PE)
音楽の構成と意図を伝える際にスケーターの体の動き、感情表現、知性の表出が十分にあることを評価します。
<考慮される点>
- 体の動き、感情の表現、知性の表出及び投射
- 身こなしと動作の明確さ
- 動作とエネルギーの多様さとメリハリ
- 個性/人柄
構成(CO)
計画的、発展的及び独創的な各種動作について(音楽のフレーズ、空間、パターン、構造の諸原則に従って)評価する。
<考慮される点>
- 目的(アイデア、コンセプト、ビジョン、雰囲気)
- パターン(表面の十分な利用)
- 空間の多次元的な利用と動作のデザイン
- フレーシングと形式(動作及び部分が音楽のフレーズにあっていること。)
- 構成の独創性
音の解釈(IN)
音楽のリズム、特徴、内容を個性的に創造的に、偽りなく氷上の演技に移しかえることを評価します。
<考慮される点>
- 音楽(タイミング)にあった動作とステップ
- 音楽の特徴/感情表現、およびはっきりと識別できるときにはリズムの表現
- 音楽の細部とニュアンスを反映するフィネスの利用
演技構成点の採点方法
演技構成点の採点方法はGOEの算出方法によく似ています。
- 9人のジャッジパネルが、10点満点・0.25点刻みで構成点を判定します。
- 9人のジャッジパネルからコンピュータによる事前抽選で2人が除外。計7人の採点が得点対象となります。
- 7人のジャッジパネルの中で、5つの項目ごとに最大値と最小値を除外します。
- 項目ごとに5人のジャッジパネルの点数から平均点を算出したものが構成点となります。
- 5つの項目それぞれの構成点に、種目・項目ごとの加重係数を乗じて合算したものが最終的な演技構成点となる。
係数はそれぞれ次の通りです。
男子SP1.0 FS2.0
女子SP0.8 FS1.6
演技構成点の特記事項
(1)1つの転倒または1つの重大なエラーを含む演技には、どの要素に対しても「10点」を与えるべきではない
(2)複数の転倒または複数の重大なエラーを含む演技には、スケーティング技術、要素のつなぎ、構成に対して「9.5点以上」を与えるべきではなく、演技、音の解釈に対して「9.0点以上」を与えるべきではない
以上が演技構成点についての説明になります。今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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step⑩ コンビネーションジャンプとジャンプシークエンスについて解説する【フィギュアスケートルール2019】
今回はコンビネーションジャンプとジャンプシークエンスについての補足説明をしていこうと思います。
今回の内容
- ジャンプシークエンスって何?
- コンビネーションジャンプのGOEのつけかた
ジャンプシークエンスって何?
前記事ではコンビネーションジャンプと同じようなものだと説明してきましたが、今回は違いをしっかり話していこうと思います。
ジャンプシークエンスとは
ジャンプシークエンスは、step④で説明した主要6種類のジャンプの間を、その他のジャンプやホップでリズミカルにつないで跳ぶ連続ジャンプのことです。
ジャンプシークエンスのデメリット
コンビネーションジャンプの基礎点は各ジャンプの基礎点を加算したものです。それに対しジャンプシークエンスの基礎点は各ジャンプの基礎点を加算したものに0.8掛けしたものになります。理由としてはコンビネーションよりも簡単だからです。同じジャンプを飛んでいるのに基礎点が下がるため勿体ないきがします。さらに基礎点の低いジャンプで構成することもできません。0.8掛けされるためコンビネーションジャンプで飛んだ方が点数がでるからです。
なぜジャンプシークエンスを飛ぶのか
それは表現の幅が広がるからです。
通常、ジャンプの着氷の足は右足です。そのためコンビネーションのセカンドジャンプはトウループかループと決まってしまいます。しかしジャンプシークエンスではファーストの後、足を変えることができるためセカンドジャンプでサルコウやアクセルなどを飛ぶことが出来ます。
それにコンビネーションでセカンドで3トウループをつけるよりはジャンプシークエンスで3アクセルをつけた方が基礎点の合計は高くなります。このように構成によっては得することもあります。ただしとても高難度な技です。
コンビネーションジャンプのGOEのつけかた
ソロジャンプのGOEはジャッジパネルがそれぞれ出したGOEの平均に0.1掛けしてさらに基礎点を掛けたものでした。コンビネーションやジャンプシークエンスの場合は少し違います。2つ(3つ)のジャンプのうち最も基礎点の高いジャンプの基礎点を掛けます。
以上がコンビネーションジャンプとジャンプシークエンスの補足説明になります。今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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step⑨ GOEのマイナス要素について(ジャンプ) 【フィギュアスケートルール2019】
今回はGOEのマイナス要素について話していきたいと思います。
<今回の内容>
- GOEの評価方法
- GOEマイナス面の種類とペナルティー
GOEの評価方法
step⑤にでも説明したので読み飛ばしてもらってもOKです。
ジャッジは各要素プラス面を考慮してGOEをつけます。その後マイナス面を考慮してGOEを引き下げます。
GOEのマイナス面
- 要件を満たさない要素の最終GOEは必ず(ショートのみ) ー5
- 転倒 -5
- 両足着氷 -3~-4
- ステップアウト -3~-4
- ジャンプ間に2つの3ターン -2~-3
- エッジ違反e -3~-4
- エッジ違反! -1~-3
- エッジ違反(テクニカルコントローラーによる判定はなし)-1
- 拙劣な踏み切り -2~-3
- ダウングレード -3~-4
- 回転不足 -2~-3
- 回転不足(テクニカルコントローラーによる判定はなし)-1~-2
- スピード、高さ、距離、空中姿勢が拙劣 -1~-3
- 両手が氷に触れる(タッチダウン) -2~-3
- 片手またはフリーフットが氷に触れる(タッチダウン) -1~-2
- ジャンプ間で流れが無い/方向を失う/リズムが無くなる(コンビネーション/シークエンス)-2~-3
- 拙い着氷 -1~-3
- 長い構え -2~-3
最後に
これで技術点については、ほとんど話ました。しかし、まだ話せていない細かなルールがいくつかあります。なので次回はその部分を話そうとおもいます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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step⑧ フィギュアスケートの採点システムについて【フィギュアスケートルール2019】
今回はフィギュアスケートの採点システムについて話していきたいと思います。
<今回の内容>
- ISUジャッジングシステムとは
- 審判団の種類と仕事内容
- 実際の採点の流れ
- レビューマークについて
ISUジャッジングシステム
フィギュアスケートではISUジャッジングシステムを導入しています。SP、FSごとに技術点、演技構成点、ディダクションを算出しそれらを合計した総合得点で順位を決める方法です。
ちなみに総合得点が同じだった場合はフリーが高いほうが上位に、それも同じだった場合は演技構成点が高いほうが上に、それも同じ場合は同順になります。
審判員の種類(技術審判)
イベントレフェリー
競技会の進行と審判団の監督を行う人です。
テクニカルコントローラー
テクニカルスペシャリストの判定を承認する人です。また必要な場合は判定を訂正します。同意しない場合は次に説明する2名とともに多数決をとります。
テクニカルスペシャリスト(及びアシスタントテクニカルスペシャリスト)
- 実行された要素の種類を判定し、宣言します 。
- 実行された要素のレベルを判定し、宣言します。
- 転倒などのディダクション(減点)となる行為を判定します。
- 革新的要素が行われた場合、それを判定し、ボーナス(2点)を宣言します。いままでボーナス点を与えられたことはありません。今後も与えられる可能性は低いです。
- 無効になる要素を判定・削除します。
国際スケート連盟主催の全ての競技会の技術審判は国際スケート連盟会長が任命します。
イベントレフェリー及び技術審判は異なる加盟国から選ばれます。
審判員の種類(演技審判)
ジャッジパネル
step⑤で話したGOEの採点をしている人たちです。
演技構成点もジャッジしています。
技術点の採点の流れ
採点は演技と同時にリアルタイムで行われます。
- 選手がジャンプ(スピン・ステップ)をする。
-
テクニカルスペシャリストがスロー再生して何の要素であったか確認して宣言します※ジャンプエラーの可能性があるときはレビューマークにして後でもう一度確認します。
- テクニカルコントローラーが承認します(承認できない場合はレビュー)。
- 技術審判の宣言をうけてジャッジパネルがGOEをつけます。
- あとは次の図のとおりです。
これを要素全てで行いその合計が技術点となります。
レビューについて
テクニカルジャッジはリアルタイムで判定するのですが、「後でもう一回見直ししたい」という要素にはレビューマークをつけておいて、演技の後に映像を見て確認します。明らかにクリーン、明らかにアウトな要素だとレビューはしません。レビューして最初の判定通りのこともあれば、判定を変えることも、両方あります。またレビューの際はテクニカルパネルは着氷時のスロー再生が許可され、ジャッジパネルは通常再生が許可されます。
今回は採点システムについて話しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
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